By The Sea

初めての渓流釣りの人へ、街の喧騒を離れ出かけよう

パニッシュという名のエクスタシー

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(パニッシュ・フローティング フックのバレ対策として改造 テールフック無し)

 

忘れもしない1987年の春、衝撃的な記事を読んだ。

HMLKミノーでデッカイ、ヤマメが釣れるというのだ。

結構釣れたらしく記事の最後にこう書かれてあった。

「渓流のミノーイングがこれ以上流行らないことを個人的に希望するのだが・・・・。」

正に衝撃的だった。

 

ナント、ミノーでヤマメが釣れる、それもデカイのが!

今笑っているお方、その頃は渓流用のミノーなんて無かった。

今とは違い通販なんて限られていたし、HMLKミノーの入手方法が分からなかった。

で、早速探し回った、小さなミノーを、これがなかなか無いのだ。

ようやく見つけたダイワのヤマメカラーのミノーはサイズが大きくイワナ、ヤマメにはどうかと思えるサイズだったが、とにかく見つけたミノーをキャストした。

重心移動などというシャレタ機構などなく、軽く空気抵抗の大きいフローティング・ミノーは思ったより飛距離が出ない、ヒラヒラと飛んで行き、ポチャンと落ちる姿は失望以外の何物でも無かった。

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パニッシュ 改造

 

当時、渓流用のルアーといえばスプーンかスピナーだった、それ以外の選択肢はなかった。

しかし、スミスから発売されたパニッシュで、劇的に、正に掛け値無しに劇的に変わった。

パニッシュには重心移動が内蔵されていて、軽くてもよく飛んだ、フローティング・ミノーにしては十分な飛距離が出たのだ。

 

釣具屋でパニッシュを見つけたとき、オレは驚喜した。

パニッシュをキャストすると次々に大物が掛かった、今まで鼻も引っかけてもらえなかったようなビッグサイズがパニッシュを襲いだした。

深く青い別世界の底から水面直下を泳ぐパニッシュめがけ、一気に駆け登るトロフィーサイズ、まるで夢のような日々がオレを捕らえて放さない、オレはどうにかなりそうだった。

 

オレは狂気の頂点に居たような気がする、極言すればどこに投げても釣れたのだ。

視点を変えると、パニッシュのおかげで釣りが下手になったともいえる、それほど嘘みたいに釣れだした。

数年間、ほとんどスプーンもスピナーも使わなかった、正にパニッシュ、サマサマだった。

朝から晩までパニッシュを投げ続けた。

渓流釣りは普通、下流から上流に釣り上がるが、パニッシュで逆に上流から下流に釣り下がることもやった。

 

幸せの頂点は永くは続かなかった。

他の釣り人がミノーを使い出したからだ。

狂気のような夢の日々はその絶対量を保ったままひっくり返りつつあった、あれほど渇望してやまなかった渓流釣りに、諦めと退屈と言う名の毒が全身を蝕みつつあった。

なまじバラ色の日々にドップリと漬かった身はその絶対量に比例して、無気力さが全身を蝕み始めたのだ。

「比べるな!」と分かってはいるがそう簡単にいかない、バカ釣りと言う名の絶頂が全身を貫いてしまったのだ。

オレは何とかしなければならなかった。

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パニッシュにピントが合ってない あしからず

 

その日は、特に釣れなかった。

諦めと単調な釣り、縦、横、斜めありとあらゆる場所にキャスト、釣れない・・・・。

少し大きめの淵で休憩し珈琲をいれた、何気なしにスプーンを入れたケースを開けたけど釣れる気がしない、オレにとってスプーンはタダの金属の塊にしか見えなかった、スプーンに対する情熱、もしくは熱量がどっかに行ってしまった。

笑ちゃうんだけど、オレは恐る恐る一番小さい2.5グラムのスプーンに交換し、珈琲を飲み茫然とタダ渓流の流れを見ていた。

その後、とにかく目の前の青く深い淵にスプーンをキャストした、たいした理由もなくほったらかしにした。

沈んでいるのか漂っているのか分からないけど中層より下だと思う、いきなりひったくるようなアタリがロッドに伝わった、その瞬間目が覚めた。

ミノーの呪縛から解き放された、そう思った。

 

よくもまぁー、数年間ミノーだけ投げ続けたものだ、凝り性なのは認めるけどナンとかの一つ覚えみたいにミノー、それも大部分、パニッシュを投げ続けた、不思議なことに他のメーカーのミノーに変えようとはコレッポチも思ったことは無かった。

 

いったいスプーンってなんだろうと思う、ミノーはどこからどう見ても小魚だヤマメやイワナだってそうに違いない。

でも、スプーンだけは分からない、昆虫?、カエル?、魚?、アレに食いつく魚の気持ちが分からない。