2011年3月11日、巨大地震が東北の太平洋側で起こった。
巨大地震ではあったが、真に驚いたのは地震の後の津波だった。オレの住む秋田では被害はなかった。
停電があり取れる情報はラジオだけだった、カーナビのテレビも見れたが万が一を考えバッテリーを少しでも温存したかった。
電気が通って真っ先にテレビを見た。
津波の圧倒的な破壊力はオレの想像を超えていた。
圧倒的な破壊力をどう理解して良いのか分からず、何度も何度もテレビを見た。
何もかもが瓦礫の下になった。
絵、書籍、楽器、写真、思い出の品々。
友人知人、恋人、夫、妻、子供、両親、容赦なく瓦礫の下になった。
災害というにはあまりにも、巨大な破壊だった。
巨大地震の後、オレは変わった。
変わったのだけれど、今だにそのことを説明できない。
変わった本人が、説明できないバカらしさ、けれどもオレは変わった。
無理に説明すると、ユックリとした速度で人と関わることが面倒になった。
いい加減年も食ったし、好きなように生きようと思うようになった。
2013年、秋田県を豪雨が襲った。
よく釣りに行く白神山地は土砂崩れが多発し、渓流の流れが変わった。
水が安定してからロッドを持って出かけた。
モウ川ではなかった、曲がりくねった渓流は真っ直ぐになり、碧く水をたたえた淵は砂に埋まった。
目の前の現実は水路と化した白神の流れだった。
初めて見る自然破壊は悲しみより、自己崩壊に近かったような気がする。
日々、寝て起きて飯食って生活しているけど頭の上から、サラサラ砂が落ちてゆくようにユックリと崩壊しているような気がした。
あれからいくつもの、季節が過ぎた。
オレが思っていたより自然の変化は力強かった、真っ直ぐな流れは変化を起こし蛇行した。
浅かった淵は深さを増し、魚達は戻ってきた。
その変化と同調するかのように、オレの崩壊も止まった。
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【不思議なお話】
彼はイイ選曲をした、オレだったらいい加減な歌を歌うんだろうな。
友人の話となっているが技術者特有の表現など、本人が書いたような気がする。
改めて聴くと感慨深い、その節はお世話になりました。