釣り場での忘れ物はいくつもあるが、今回もやってしまった。
藤琴川本流のヤマメを釣るため下流域で、朝早くから釣りを開始した。
デッカイ、ヤマメの写真をブログに載せたくて準備万端で望むことにした。
フックも交換、ルアーも買った、ついでにSMITHのロッドも磨いた。
現地についてイソイソと準備を始めた。
そこで初めてランディングネットが無いことに気づいた。
無い、無い、車のどこ探してもない、前回の釣りで忘れたみたいだ。
ホームセンターで買った安物だが、長年連れ添った相棒なのだ。
ロッドもリールも何度か変えたが、コイツだけは変えなかった。
オレはヘコンだ、これが始まりだった。
目的のポイントに気を入れ替え向かうことにした。
静かにソーッと、泥棒のように近づく、魚達は驚くほどの探知能力を持っている。
水深のあるプールで買ったばかりのDDパニッシュのシルバーをキャスト。
一気にルアーを沈め操作を止め、DDパニッシュを浮き上がらせる。
キター、デカイ、ヤマメの重量感が腕に伝わる。
ヤマメを水面に出した瞬間、オレは勝利を確信した。
「ブログに出せるーーーー」と思った瞬間・・・・。
バレた、バレてしまった。
もう一人の自分が囁く、耳元で。
「だからサー、テールフック付けた方が良いんじゃないノー」
うるせー、テールフック付けないと、なけなしの勇気振り絞ってココロに誓ったのだ、今更そんな物付けてたまるかー。
釣り上がりもう一つのプールに向かった。
意地でもデカイの釣ってやる。
時間と共にバラしたヤマメが勝手に大きくなる、頼んでもいないのに。
ミノーを変えた、デッカイ魚にはデッカイ、ルアーって事で80㎜のミノーを出した。
おれの殺気に気づいたのか魚達は出てこない。
水中から魚達の呟きが聞こえて来るような気がする。
「おバカーーーーー」
オレは頭に血が上った、ついでに血圧も上がった。
場所を変えた、魚止めの堰堤に向かった。
ここは強者共が入れかわり立ち替わりの大場所だ、堰堤からの水しぶきが霧状になって身体にわとわりつく。
選んだルアーはヤマメをバラしたDDパニッシュのシルバー。
ミノーをスナップに付けた・・・・つもりだった。
頭に血が上っていたオレは「つもりだった」、が実際はスナップにルアーは付いていなかった。
ルアーから手を放した。
その瞬間、足下の激流にポタリと落ちた・
「?????、!!!!」
ルアーは流される、オレはルアーを探したが見つけられない。
「オレのミノー、買ったばかりのミノー、貯まったポイントで買ったミノー」
もう一人の自分が耳元で囁く。
「だからサー、シンキングミノーを揃えたらー」
ウルセーーー!
オレは、いじけて帰った。