By The Sea

初めての渓流釣りの人へ、街の喧騒を離れ出かけよう

山奥の祭り囃子 (釣りであった不思議なお話)

f:id:iwana99:20200815212710j:plain

銀杏神社の樹齢約1360年の銀杏の木、秋田県指定天然記念物

渓流に行くと様々な音が聞こえる。

鳥の声、カジカの声はとてもカエルの声とは思えない、吹き抜けてゆく風の音、などなど。

けれども、まったくの静寂が支配する無音の日もある。

 

確かあの日もそうだった。

少し蒸し暑い日で、鳥の声も聞こえなかった。

かなり上流域でイワナを釣っていた時、音が聞こえてきた。

上流から太鼓や笛の音が聞こえる、祭り囃子の音が聞こえる。

ハッキリした音ではない、耳を澄ませば聞こえるのだ。

しかし、しかしだ、ここはもう白神山地の領域で、上流には村などない奥深い白神の山々が続くだけだ。

f:id:iwana99:20200815213124j:plain

 

取り立てて怖いとは思わなかった。

耳を澄ませば聞こえる程度なので、意識を渓流の流れる音に向ければ聞こえなくなった。

けれども、釣りに集中すればまた聞こえてくるのだ。

軽い溜息をつきながら、オレは釣り上がっていった。

ここまでは良かった。

 

ある場所でイワナの25㎝くらいのを掛けた。

イワナを寄せてきたら、何かおかしい形をしたイワナであることに気がついた。

魚の口は普通尖った形をしているが、このイワナはまるで刃物で切られたかのような、真っ平らな形をしていた。

それは一種、人面魚を思わせる形をしていた。

 

オレは動けなくなってしまった、釣ってはいけない魚を釣ってしまった・・・そう思った。

急激に膨れ上がる恐怖感、どうやって針を外したか今だに覚えていない、思い出せない。

山がオレをみている・・・、そう思うとその場から逃げたくなった。

 

本流に流れ込んでいる小さな沢を見つけ、必死にその小さな沢を登り道に出た。

それから数週間、釣りには行かなかった。

f:id:iwana99:20200815213238j:plain

最大の釣り道具・・・クルマ(笑)ちなみにホンダ ストリームRSZ