2011年3月11日、東日本大震災が起こった。
停電のため状況がよく分からない、ラジオでは騒がしく災害の状況を伝えているが、映像がなくもどかしかった。
3.11でオレも変わったが、世界の流れも変わったと思う。
インターネットは偉大だった、マスコミが介入しない海外の人達の声が聞こえた。
壊滅といっていいほどの災害だったけど、2011年を境に海外の旅行客が増え続けた。
【日本食を食べる外国人、今でも不思議】
想像もしなかったことが起きていた。
少し前までは「カレー!これのどこが美味いんだ?」みたいな意見が多かったと思う。
米はウジ虫を連想させ、トロリとしたルウは正体不明の食べ物だった。
旨味成分とか何かいったん取っかかりができると、海外の彼ら彼女らは驚くほど貪欲だ。
刺身をうまそうに食う白人、枝豆を食う黒人などはオレは想像外のことだった。
地方に行って温泉に入ったり、大体において温泉に入る外国人は想定外だし、イメージが湧かない。
だいぶ前になるがテレビで「ゲゲゲの鬼太郎」の主題歌を歌う黒人にひっくり返るほどビックリしたことがある。
【一度日本を捨てよう、だから見えてくるものがある】
そうした海外の彼らや彼女らの視点を借りて、オレは一時的に日本から出たような気がする。
分かりやすくいえば、彼らの視点に憑依したとでもいっていい。
海外旅行もままならない経済力では、無理矢理にでも一時的に外国人になり日本を見たかった。
それには一時的にせよ、日本を捨て去る必要があった。
アジアの片隅に四方を海に囲まれ、我々欧米人とは全く違う価値観と文化を持った美しい国がある、2011年からそんな噂が世界中に口コミで広がった。
実際行ってみると、期待以上の体験で「Planet Japan」と呼ぶようになった。
ヨーロッパの片田舎に住む若者達は、口を揃えて「こんな街からいつかは出るんだ」という。
貴族文化が色濃く残るヨーロッパでは、閉塞感が若い人の心を蝕んでいたような気がする。
そんなときに日本のマンガやアニメは、正に渡りに船だったと思う。
彼ら、彼女らはマンガやアニメという視点を借りて日本を見た。
日本文化を体験したい、日本に行ってみたいという流れはごく自然だった。
そして、インターネットがその流れを更に加速した。
自分達の価値観と違った位置に立つ、日本の美意識は熱狂的ファンを生み出した。
【Planet Japan】
書いた事が全て、言ったことが全て、書いていないことは存在しない、言っていないことは存在しないという彼らの価値観に対して、日本では書いていなくとも存在する、言っていないことでも存在すると、正に真逆の文化を日本は持っていた。
ミステリアス、神秘的な国それが日本だった。
実際に日本に行ってみると、何食っても美味いし日本酒も美味い、文化に関しても多様だった。
新と古が同時進行していた。
街並みを歩いていると突然、異次元空間の入り口みたいに古い神社仏閣が出現する。
それらはタダあるのではなく、チャンと機能していて多くの人が利用している。
神社では自分の吉凶を占い、いずれの宗教とも相対することが無い。
【日本人って何だろう?】
そして、一番心に残ることが日本人の優しさだった。
白人、黒人、黄色人種、火星人、金星人、そんなことは一切関係なく、皆外国人だった。
肌の色がスパーブラックだろうが、ホットピンクだろうが、ウルトラマリーンだろうが、日本人から見たらそれは皆外国人だった。
オレは思う、いったい日本人って何だろう?